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2022.10.27

現役エンジニアから見るリアルなHeadlessCMS

この記事では、一般的に語られるように分かりやすくHeadlessCMSの特徴をお伝えするのではなく、多少専門的な内容でもエンジニア目線で見るリアルなHeadlessCMSについてお伝えしたいと思います。

HeadlessCMSとは

まず初めに、少しだけHeadlessCMSについてご紹介します。

HeadlessCMSは、Wordpressなど従来のCMSと比較することで説明されることが多いです。Wordpressなど従来のCMSがコンテンツ表示機能とコンテンツ管理機能を持っている一方、HeadlessCMSはコンテンツ表示部分を持っておらず、コンテンツ管理機能のみを持っています。そのためコンテンツを表示するためには、HeadlessCMSが提供しているAPIを使用してコンテンツのデータを取得しサイト等で表示する仕組みを別途作成する必要があります。(より詳しく知りたい方は、microCMSさんが寄稿されているこちらの記事などをご覧いただけるといいと思います。)

HeadlessCMSの強み

1.構築手法が自由に選べる

従来のCMSと比べた時に一見弱点に見える「コンテンツ表示機能を持たず独自に開発する必要がある」という点が、HeadlessCMSの一番の強みであると思います。なぜなら、それは裏を返せば「コンテンツ表示機能を独自に開発することができる」ことになるからです。

Wordpressのような従来のCMSは、CMSの仕様に従えば簡単にCMSが構築できる反面、流行りのJavascriptフレームワーク等、CMSの仕様にハマらない技術を採用することができませんでした。API連携さえすればコンテンツのデータを取得できるHeadlessCMSなら、従来のCMSのように開発手法に制限を受けることはなく、Javascriptフレームワーク含め自由に最適な構築手法を選ぶことができます。CMSの制限を受けることなく自由に構築手法を選ぶことができる。これがHeadlessCMSの大きな強みであると思います。

2.CMS管理コストが削減できる

従来のCMSの多くがサーバーにインストールして使用するため、セキュリティ対策やCMSで使用されている言語のバージョンアップ対応などの管理コストが発生します。しかしHeadlessCMSはSaasサービスであることが多く、サービス側でそういったセキュリティ対策等のサーバー管理を行うため導入企業側で管理工数が発生することはほとんどありません。構築手法にもよりますが、静的サイトと同等のほとんど脆弱性のないサイトを作ることも可能です。

HeadlessCMSの弱点

1.開発ハードルが高い

先ほど「コンテンツ表示機能を独自に開発することができる」ことを強みとしてお伝えしましたが、独自のコンテンツ表示機能を構築するためには、JavascriptフレームワークやAWSなどのクラウドサービス等、高度なスキルセットが必要です。そのような市場価値の高いスキルセットを持ったエンジニアが必要であることはHeadlessCMSの弱点の1つであると言えると思います。

世の中にはNetlifyやVercelなど、簡単にコンテンツ表示機能を使用できる海外製のホスティングサービスは存在しますが、実務ではそれらが使えない場合がほとんどだと思います。結果的にHeadlessCMSを導入するためには、独自のコンテンツ表示機能を構築できるような高いスキルセットを持ったエンジニアが必要だというのが現実だと思います。

2.メリットが分かりにくい

もう一つの弱点はHeadlessCMSのメリットが開発者以外に伝わりづらいということです。

CMS構築を行う場合、発注者側からの何らかのCMSを導入したサイトを制作して欲しいという依頼を受けて、制作会社がCMSを選定・提案し、導入するCMSが決定されるのが一般的な流れだと思います。

しかしHeadlessCMSを導入しても、最終的にユーザーが触れるサイト等の見た目や、コンテンツ管理者が触れる管理画面の操作感に、従来のCMSと比べて特別な変化があるわけではありません。CMSの管理コストが削減できたり、API連携によって見た目だけをクイックに修正できたりと、全体として見ると確かにメリットはありますが、それらのメリットを享受するのはほとんど開発会社側であり、発注者側が直接享受できるような分かりやすいメリットはありません。発注者側にメリットがなかなか伝わらないこともHeadlessCMSの弱点の1つであると思います。

さいごに

この記事では強みと弱点という形でHeadlessCMSを紹介しましたが、HeadlessCMSの特徴は見方によっては強みでもあり弱点でもあります。業務でHeadlessCMSを導入する際には、そんな強みにも弱みにもなるHeadlessCMSの特徴を、案件の性質に合わせて分かりやすく説明する必要があると思います。

まとめ

  • 従来のCMSと違い、API連携を前提としているためCMSの仕様に縛られない自由な構築が可能
  • Saasサービスであることが多いため、脆弱性対策のコストやCMSサーバーの管理コストがほとんど必要ない
  • 開発ハードルが高いため、高いスキルセットを持ったいエンジニアが必要な場合が多い
  • 全体としてはメリットがあるものの、コンテンツ管理者のみが享受できるメリットはあまりない
  • HeadlessCMSの特徴は強みにも弱みにもなるので、案件の性質に合わせて分かりやすく説明する必要がある


ブログの執筆者

スズキトシヤ
workGeneral manager / Technical director
フロントエンドクラブの代表です。プログラミングとプランニングがちょっとできます。広告とサッカーが好きです。受賞歴:GOOD DESIGN AWARD / ACC / Young Lions Competitions - finalist / W3 Awards / The Webby Awards 等

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